東京地方裁判所 平成12年(ワ)6564号 判決
原告 X
被告 Y1
被告 Y2
主文
一 被告Y1は、原告に対し、金六〇万八六一三円を支払え。
二 原告の被告Y1に対するその余の請求及び被告Y2に対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告と被告Y1との間においては、被告Y1に生じた費用の五分の一を原告の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告Y2との間においては、全部原告の負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、別紙物件目録記載の店舗を明け渡せ。
2 被告Y1は、原告に対し、平成一二年一月一日から第一項の店舗明渡済みまで一か月一〇万円の割合による金員を支払え。
3 被告Y1は、原告に対し、平成一一年一二月一日から第一項の店舗明渡済みまで一か月二万八二五一円の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告らの負担とする。
5 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、別紙物件目録記載の建物全体(以下「本件建物」という。)の所有者であるところ、平成一〇年三月、本件建物のうち、別紙図面赤枠部分の店舗(以下「本件店舗」という。)におけるスナックの経営を、被告Y1(以下「被告Y1」という。)に対し、次の約定で委託した(以下「本件契約」という。)。本件契約は、経営委託契約である。
(一) 被告Y1は、本件店舗において、原告がそれまで経営していたスナックを既設の什器備品等をそのままの状態で使用して運営すること。
(二) 委託契約の期間は、平成一〇年三月八日から一年間とし、協議の上更新することが出来る。
(三) スナックに必要な電気、ガス料金及び税金は被告Y1の負担とする。
(四) 被告Y1は、原告に対し、
(1) スナックの設備使用量として、月額金一〇万円を毎月末日までにその翌月分を支払う。
(2) 右(1) のほか、報酬として、スナックの毎月の売上高を明らかにして、その売上高の五パーセントに相当する金員を毎月末日に支払う。
(五) スナックの営業時間は、午後六時から翌日午前二時までとする。
(六) スナックを他人に貸したり、使用させたりしないこと。
2 原告と被告Y1は、平成一一年三月八日、右委託期間の満了に当たり、同被告からの申し出により、左の条件を追加して契約を更新した(以下「本件契約更新」という。)。
(一) 1(四)(2) の売上高の五パーセントの報酬の計算を透明にし、かつ、正確にすること。
(二) 1(五)の営業時間を厳守すること。
(三) 1(六)のスナックの営業は被告Y1に限ること。
(四) この延長した委託期間は六か月間とすること。
3 ところが、被告Y1は右2の条件をいずれも守らず、また、平成一一年四月一六日、同年四月分の設備使用料金一〇万円と、同年四月分の売上高に対する五パーセントの報酬分について、賃料と称して、合計一二万三八六〇円を被告Y1の夫である被告Y2(以下「被告Y2」という。)名義で供託するに至った(以下「本件供託」という。)。
4 被告Y2は、本件店舗を被告Y1と共に不法占有している。
5 そこで、原告は、被告両名に対し、平成一一年七月、東京簡易裁判所に店舗明渡の訴えを提起した(平成一一年(ハ)第九一一九号店舗明渡請求事件、以下「前訴訟」という。)。
そして、前訴訟において、平成一一年一〇月八日、原告と被告Y1との間に左記内容の和解が成立した(以下「本件和解」という。)。
記
原告と被告Y1は、本件委託契約について、従前の契約どおりの契約内容で平成一一年三月八日に更新されたことを相互に確認する。
ただし、被告Y1は、原告に対し、被告Y1の営業に関し、近隣に迷惑をかけないようにすることを約する。
6(一) ところが、原告は、平成一二年二月三日、品川区保健環境部長A(以下「A環境部長」という。)から、本件店舗について、「近隣住民からカラオケが夜中の三時ころまで続き、迷惑しているという苦情があったので、原告において善処すること」との注意を受けた。
なお、原告は、本件建物のうち、本件店舗の二階部分を賃貸していたが、平成一一年七月、賃借人の女性が、被告Y1のカラオケの騒音によって転居したということがあった。
(二) また、被告Y1は、
(1) 1(四)(1) の設備使用料の平成一二年一月分から平成一二年二月分までの金二〇万円と、
(2) 1(四)(2) の報酬として支払うべき毎月の売上高の五パーセントに相当する金員の平成一一年一二月分から平成一二年二月分までの支払を怠った。
7(一) 原告は、被告Y1に対し、平成一二年二月一五日付の内容証明郵便により、6(一)の本件和解違反と、6(二)(1) の設備使用料の不払い及び6(二)(2) の報酬不払いを理由として本件契約を解除する旨の意思表示をしたが、右内容証明郵便は、受領を拒否され、不送達となった。
(二) そこで、原告は、被告Y1に対し、平成一二年四月一九日に送達された本件訴状により、6(一)の本件和解違反と、6(二)(1) の設備使用料の不払い及び6(二)(2) の報酬不払いを理由に本件委託契約の解除の意思表示をした(以下「本件解除」という。)。
(三) なお、被告Y1は、平成一二年二月一七日に、6(二)(1) の不払設備使用料のうち、平成一一年一二月分の設備使用料を支払い、6(二)(2) の不払報酬のうち、平成一一年一一月分の報酬を支払った。
(四) 被告Y1が平成一一年一一月分からのスナックの売上高を明らかにしないが、平成一一年六月分から同年一一月分までの過去六か月間分の同被告が支払った報酬額の平均額は、左記のとおり、一か月二万八二五一円であるから、原告は、本件解除までは同額の報酬請求権を有し、本件解除後は同額の損害賠償請求権を有する。
記
平成一一年六月分 三万五五〇〇円
七月分 二万九一七〇円
八月分 二万六一六五円
九月分 二万六一六五円
一〇月分 二万八〇二〇円
一一月分 二万四四九〇円
8 本件契約は、平成一二年三月七日には期間満了により終了している。
9 よって、原告は、被告らに対し、本件店舗の明渡しを求めるとともに、被告Y1に対し、平成一二年一月一日から右明渡済みまで一か月一〇万円の割合による設備使用料又は設備使用料相当の損害金及び平成一一年一二月一日から右明渡済みまで、一か月二万八二五一円の割合による報酬金又は報酬金相当の損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1(一) 請求原因1(一)は否認する。
本件契約は、経営委託契約ではなく、本件店舗の賃貸借契約である。
本件店舗は、長期間空き店舗となっていたもので、本件店舗に以前から設置してあったカラオケ、冷蔵庫、食器などは、古すぎたり、壊れていたりして使用できなかった。被告Y1は、既設の椅子・テーブル等を除き、什器・備品のほとんどを原告へ返却したうえ、開店にあたり、店内外の改装(床の基礎工事・カーペットの取り替え・壁紙の取り替え・コンクリート部分の打ち替え等)や什器・備品(冷蔵庫・製氷器・通信カラオケ・その他の物)等を新たに購入した。それらの費用は約四〇〇万円である。
(二) 同1(二)から(四)まで及び(六)は認める。
(三) 同1(五)は否認する。
店舗を最初に借りる時の話し合いの中で、客商売(スナック)をしている中で、きっちりと時間内に店を終わらせることはどこの店でもできないから、営業時間は柔軟にしようということが話し合われ、そのうえで契約書が交わされた。
2 同2は否認する。
平成一一年三月の本件契約の更新にあたり、原告は、被告Y1に対し、契約期間を、従来の一年から半年に短縮し、立会人又は保証人欄を連帯保証人欄に変更した更新契約書(乙三の(1) 、以下「本件更新契約書」という。)を一方的に送付してきたうえ、本件店舗においてスナックの営業に加えて午前一一時から喫茶店を営業することを求める覚書(乙三の(2) 、以下「本件覚書」という。)を送付してきた。被告Y1は、本件更新契約書及び本件覚書の内容に承服できなかったので、本件更新契約書に署名、押印しなかった。したがって、平成一一年三月には合意による契約更新は行われておらず、原告主張の本件契約更新はなされていない。
3 同3のうち、被告Y1が、被告Y2名義で本件供託をしたことは認めるが、その余は争う。
被告Y1は、本件契約の更新契約書も作成ないまま、営業を行う不安もあり、原告に対し、当初の契約どおりの更新契約書を早く作成させるための苦肉の策として、被告Y2に命じて、平成一一年四月分の設備使用料及び報酬を供託したものである。
4 同4は否認する。
被告Y2は、被告Y1の夫であり、妻である被告Y1の仕事を手伝っているにすぎないから、独立の占有者ではない。
5 同5は認める。
本件和解により、契約期間は一年になったにもかかわらず、原告は、契約期間を一年と考えている。
6(一) 同6(一)中、平成一一年に一度、品川区役所からカラオケの騒音について指導を受けたことは認めるが、その余は否認する。
品川区の担当者が、昼に被告Y1と連絡をとるために、本件建物の真裏に住む大家である原告のもとに被告Y1の住所、電話番号を聞きにいった際、右住所、電話番号を教えてもらう理由として、原告に対し、カラオケの苦情の件を説明したものであり、原告がA環境部長から善処を求められた事実はない。
被告Y1は、品川区役所から指導を受けた後、深夜はスポーツ、演劇、音楽番組をビデオ映像で流すという改善案を品川区役所に伝え、以後はこれを守るように心掛けている。
(二) 同6(二)中、被告Y1が平成一二年二月分及び三月分の設備使用料及び報酬(以下「支払拒絶設備使用料等」という。)を支払っていないことは認めるが、その余は否認する。後記「被告らの主張」記載のとおり、本件契約締結当時、本件店舗に設置されていたエアコン(以下「本件エアコン」という。)が、平成一二年二月、頻繁にストップしたので、被告Y1は、原告に対し、修理を打診したところ、断られたため、修理代金を保全するため、右設備使用料及び報酬を不払いのままにしているものである。
7(一) 同7(一)から(三)までは認める。ただし、被告Y1は、後記「被告らの主張」記載のとおり、支払拒絶設備使用料等を除き、平成一二年四月分までの設備使用料及び報酬を支払っている(本件供託を含む。)。
(二) 同7(四)中、被告Y1が、報酬として、毎月二万八二五一円の支払義務があることは認めるが、その余は争う。
本件契約を締結する際、原告から、報酬額(売上高の五パーセント)を把握するため、原告が持参する通し番号付きの売上伝票に必要事項を記入のうえ、毎月提出してほしいとの要望があり、被告Y1はこれを了承し、実行した。被告Y1は、原告に対し、売上伝票は、貴重なデータ(いつ、誰が、何を飲み、料金は、現金払いか掛売か等)が書かれているので、原告が売上高を確認した後は毎月速やかに返却してほしいと頼んだが、原告はこれを返却せず、結局、返却されたのは、本件契約が成立してから一年半後の平成一一年一〇月ころだった。前訴訟の答弁書において被告Y1がこれを主張したためにやっと返却されたものである。しかも、原告は、売上伝票を返却するにあたり、これを直接被告Y1に返却せず、本件店舗のドア横のエアコンの後ろに置き、店の出入口にその旨の張り紙をした。このように原告が被告Y1の大切な売上伝票を粗雑に扱うことに抗議する趣旨で、現在、売上伝票の引渡しをしていない。
8 同8、9は争う。
三 被告らの主張
1 原告の本件契約の違反行為の存在(本件解除の無効)
(一) 原告は、長期間空き店舗になっていた本件店舗の借主の紹介を品川区の老人ホーム(東京高齢者生活共済会)の園長の妻で、リサイクルショップを経営していたB(以下「B」という。)に依頼した。被告らは、右老人ホームで約一五年間ボランティア活動をしており、Bと顔見知りであったので、Bは、被告Y1に対して原告を紹介し、本件契約が成立した。
(二) 本件店舗は、請求原因に対する認否1記載のとおり、とても営業できる状態ではなかったので、被告Y1は、被告Y2とともに約四〇〇万円の費用をかけて店内外の改装を行い、什器・備品等を新たに購入した。
(三) 本件エアコンの修理拒絶
(1) 本件契約が成立した後、開店準備に二か月を要したが、同年五月九日、被告Y1は、本件店舗でスナック「美美」を開店した。
(2) ところが、その二か月後の七月に、本件店舗内の天上吊り下げ型のエアコンである本件エアコンから大量の水漏れが始まった。
(3) 被告Y1は、営業時間中に、エアコン水抜き口からビニールホースを付け、二〇リットルのポリタンクに水が流れるように応急措置をとり、翌日、原告に対し、修理を依頼した。これに対し、原告は、被告Y1が勝手にホースを付け替え、処置したのだから契約違反になり、修理はできないと修理を拒絶した。
(4) そこで、被告Y1は、仕方なく、一晩に何回もポリタンクの水を捨てながら営業を行ってきたが、平成一二年二月、今度は本件エアコンがストップするようになり、真冬の寒さの中、電気ストーブを併用して営業するようになった。
(5) 本件エアコンのメーカーに連絡し、点検してもらったところ、本件エアコンは、コンプレッサーが故障しているが、一六年前の製品なので、おそらく部品はないだろう、新品を入れ替えれば五割引きにして五〇万円から六〇万円で、部品のコンプレッサーがあれば、一九万円から二〇万円で修理できると言われた。
(6) 数日後、メーカーから、名古屋に一台コンプレッサーがあるという連絡が入ったので、原告に相談したが、原告はにべもなく断った。
(7) 本件エアコンは、昭和五六年に本件店舗の以前の賃借人であるCが自費で購入し、設置したものであり、被告Y1としても、五年、一〇年と使用していて壊れたのであれば、自費で修理するつもりであったが、開店して二か月目から使い物にならないのであるから、被告Y1の負担で修理すべきものではなく、設備使用料をとっている原告が修理すべきものである。
(四) 電気料金の不正取得
(1) 本件店舗の真上には、六畳と五畳の部屋があり、六畳の部屋は外階段から自由に出入りできるようになっていたが、五畳の部屋は、本件店舗と一体で、本件店舗からだけしか出入りできない構造になっていた。被告Y1が、五畳の部屋を借りることを断ったため、原告は、五畳の部屋の壁を壊して六畳の部屋と同様に外階段から出入りできるように改築し、これを女性に賃貸した。
(2) その後、半年位経ってから、近所の人が、「二階奥の電気料金はどうなっているの。」と被告らに尋ねたので、被告らは最初何のことか分からなかったが、その人は、五畳の部屋の電気メーターは、本件店舗のものを使っているから、五畳の部屋の電気料は、被告Y1が支払っている旨教えてくれた。そこで、被告Y1は、原告にその点を問いただしたところ、原告は、「そんなことはないと思いますよ。」と答えた。
(3) 後日、東京電力に事情を説明し、調査をしてもらったところ、五畳の部屋では本件店舗の電気が使用されており、その電気料を被告Y1が支払っていたことが判明した。原告は、五畳の部屋の電気料金を毎月借家人から徴収し、一年余りもこれを被告Y1に支払わず、着服していたものである。
(4) 平成一一年三月になっても原告が電気料を支払わないので、被告Y2が原告を呼び、怒った態度を見せたところ、三万円を支払った。
(五) 本件更新契約書及び本件覚書の送付
原告は、請求原因に対する認否2記載のとおり、一方的に本件更新契約書及び本件覚書を送付してきて、合意による本件契約の更新を困難にした。
(六) 売上伝票の返却遅滞等
原告は、請求原因に対する認否7(二)記載のとおり、売上伝票の返却を遅滞したうえ、これを粗雑に扱った。
(七) 以上のとおり、原告は、本件契約に違反しているので、被告Y1に原告主張のような本件契約の違反があったとしても、本件解除は効力を有しない。
2 弁済
被告Y1は、支払拒絶設備使用料等を除き、平成一二年四月分までの設備使用料及び報酬を支払った(ただし、本件供託を含む。)。
3 支払拒絶
被告らの主張1(三)記載のとおり、本件エアコンの修理には、一九万円から二〇万円が必要になる。被告Y1が修理代を支払って修理したとしても、原告からその支払を受けられる可能性はない。したがって、被告Y1は、原告が本件エアコンの修理をするまで、右修理代に相当する支払拒絶設備使用料等の支払を拒絶する。
四 被告らの主張に対する原告の認否
1 被告らの主張1について
被告らの主張1中、Bの紹介で原告と被告Y1が本件契約を締結することになったことは認めるが、その余は争う。本件店舗の営業許可は、原告の名前でとっており、本件契約の際、本件店舗は原則として原状のまま使用すること、被告Y1が手を加える場合(修理を含む)は、原告の許可を得て被告Y1が費用を負担して行うことを合意した。
2 同2について
同2は認める。ただし、本件供託は弁済とは認められない。
3 同3について
同3は争う。本件契約によれば、本件エアコンの修理は、被告Y1が自費で行うべきものである。
理由
一 本件契約の性質について
1 請求原因1(二)から(四)までの事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実、甲一号証、六号証の一から四まで、乙一号証の(1) 、(2) 、二号証、証人Bの証言、原告本人尋問の結果、被告Y1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一) 原告は、約二〇年前に本件契約の契約書(甲一、乙二、以下「本件契約書」という。)のひな形を不動産会社の代表者に作成してもらい、以後、右ひな形に従って、本件店舗について、本件契約と同様の契約を四、五人との間で締結してきた。
(二) 原告は、本件店舗において飲食店を営業することについて、許可を得ており、過去に本件契約と同様の契約を締結する際も、本件店舗における原告のスナック営業の経営を委託する形式にしてきた。
(三) 本件契約締結の約二年前から、本件店舗は空き店舗となっており、原告は、本件店舗でスナックを営業する者を探していた。
(四) Bは、夫と共にリサイクルショップや民営の老人ホームを経営し、また、スナックの店舗の賃貸もしていた。原告はリサイクルショップの顧客として、Bと顔見知りであったので、本件店舗でスナックを営業する者の紹介をBに依頼した。その際、原告は、権利金は取らない代わりに売上の五パーセントを原告がもらうという条件である旨伝えた。Bは、一〇年位前から右老人ホームでボランティアとして老人の世話をしてきた被告らと顔見知りであったので、被告Y1は性格的に向いているとの判断から、被告Y1に本件店舗でスナックを営業することを勧めた。
(五) 被告Y1は、Bから本件店舗でのスナック営業を勧められた際、寿司店で働いていたが、Bの勧めに応じることにした。そこで、Bは、被告Y1を原告に紹介した。
(六) 平成一〇年二月末ころ、原告と被告らは本件店舗で会い、原告は、被告らに本件契約書を交付するとともに、本件店舗の設備を使ってスナックの営業をしてほしい、設備使用料として一か月一〇万円を支払ってほしい、営業をやっていくと実績ができるのでその売上の中から五パーセントを支払ってほしいと述べるとともに、営業時間や設備使用料・報酬の支払時期など、本件契約書の記載内容の要点を告げた。
(七) 被告らは、本件契約書の保証人及び立会人欄にBから署名・押印をしてもらい、平成一〇年三月八日ころ、原告と会って本件契約書を完成させ、本件契約を締結した。本件契約書は、「経営委任契約書」という表題が付されており、その内容は、左記のとおりである。
記
(1) 原告は、被告Y1に対し、本件店舗におけるスナック営業の経営を委任し、被告Y1はこれを受託した。
(2) 被告Y1は、保証金として二〇万円を本契約成立と同時に原告に支払い、右保証金は無利息とし(ただし、器具並びに建物破損に対し、明渡しの際損害賠償金として控除することができる。)、一年後に返却する。また、設備使用料は、一か月一〇万円と定め、被告Y1は、毎月末日までに翌月分を支払う。
(3) 被告Y1は、原告に対し、毎月末日までにその月の売上金のマージンとして五パーセントを原告の指定する銀行口座に振り込む。
(4) 本委任状態は、期限を一年とし、相談のうえ更新することができる。話し合い不能の場合は、立ち退き手数料は一切必要としない。
(5) 被告Y1は、営業上、保健所、警察署関係等並びに近隣の住人、他人に迷惑を掛けた場合は、被告Y1において解決し、原告には一切責任がないものとする。
(6) 本契約を被告Y1が一方的に解約した場合は、保証金は返済しない。
(7) 器具並びに食器類については、開始前に数量を点検して破損又は紛失した場合は、速やかに補充する。また、被告Y1において補充することを認めるが、解約した時は速やかに持ち出す(使用器具並びに食器類は、開業前に別紙に原告・被告Y1立会のうえ、数量を明記し、解約の際に照合、点検引渡しのできるようにする)。
(8) 被告Y1は、本件店舗においてスナック委任営業をなす。午後六時から翌午前二時までとし、他の使用は絶対しないこと。
(9) 二階の部屋については絶対使用しないこと。
(10) 営業上にかかる手続費用並びに電気、ガス、水道、電話料、税金等については被告Y1の責任において支払う。
(11) 本件店舗内の改装並びに模様替えについては、原告の責任において施工し、費用は被告Y1が支払い、解約の際は無償で残置する。
(12) 店舗の使用を他人に貸したり、被告Y1が直接営業しないことを知った際は、(原告は)予告なく、即時解約する。
(八) 本件契約締結の際、右(七)(3) のマージン(原告主張の報酬、以下報酬という。)については、原告がナンバリングを打った連続伝票を被告Y1に渡し、それに被告Y1が売上を記入して原告に渡し、原告としては、それを信用して右売上伝票に記入された売上の合計額の五パーセントを報酬として受領することが約束された。
(九) 本件契約締結当時、本件店舗は、内外装とも古くなっており、改装しなければ営業できないような状態であったので、被告Y1は、被告Y2からの資金援助を得て、腐った床板の張り替え、その上のカーペットの張り替え、店舗出入口、調理場のコンクリート打ち変え、天井や壁のクロスの貼り替え等の改装を行った。また、テレビ、カラオケセット、冷蔵庫、食器類などの什器備品も、古すぎたり、壊れたりしていたため、被告Y1は、被告Y2から資金援助を得て、これを買い替えた。したがって、本件店舗の設備のうちで、従前存在したものを使用することになったものは、カウンターとボックス席、ライト及び本件エアコンだけであった。右改装や什器備品の買い替えのために被告らが支払った費用は、約四〇〇万円であった。
(一〇) 被告Y1は、本件契約締結後、約右(九)の改装、買い替えを行い、平成一〇年五月九日、スナック「美美」の名称で本件店舗での営業を開始した。
(一一) 被告Y1が本件店舗での営業を開始した後、原告は、一か月に一度は、本件店舗に飲食に訪れ、被告Y1と営業の状況などについて話をしていた。
(一二) 本件店舗の一か月の売上は、営業開始から現在に至るまで、四〇万円から五〇万円程度である。
2(一) 右1の事実によれば、<1>本件契約書には、「経営委任契約書」という表題が付されていること、<2>原告は、本件店舗において飲食店を営業することについて許可を得ており、本件契約書には、原告は、被告Y1に対し、本件店舗におけるスナック営業の経営を委任するものであることが明示されていること、<3>本件契約では、被告Y1は原告に対し、毎月、売上金の五パーセントの報酬を支払う約束になっていること、<4>本件契約書には、期限を一年とし、相談のうえ更新することができる、話し合い不能の場合は、立ち退き手数料は一切必要としない旨の記載があること、<5>本件契約書には、器具並びに食器類は、原告が本件店舗に備え付けたものを被告Y1が趣旨の記載があること、<6>被告Y1は、本件店舗に備え付けてあったカウンター、ボックス席、ライト及び本件エアコンを使用してスナックを営業したこと等、本件契約が原告が主張するように経営委託契約であることを窺わせるような事実が存在することが認められる。
(二) しかし、さらに右1の事実によれば、<1>本件店舗でのスナックの営業は、被告Y1の計算で行われ、その損益は被告Y1に帰属し、被告Y1は、本件店舗の売上の有無、金額にかかわらず、原告に対し、一か月一〇万円の設備使用料を前払いする義務を負うこと、<2>本件契約上、本件店舗での営業の対外的な責任はすべて被告Y1が負担することになっている(右1、(七)、(5) 、(10))こと、<3>被告Y1は、本件店舗の売上の五パーセントを報酬として原告に支払う義務を負うが、右<1>、<2>のとおり、そもそも、原告が本件店舗でのスナックの営業についてこれを経営しているという実質は何ら存しない(右1で認定したとおり、原告は、一か月に一回本件店舗に飲食に訪れる程度で、売上についても、被告Y1の作成した伝票で確認するにすぎない。)うえ、本件店舗の売上は、一か月四〇万円から五〇万円であり(原告は、過去の実績から考えて一か月一〇〇万円ぐらいになると思っていた旨供述するが、右1で認定したとおり、本件店舗は、本件契約が締結されるまで、約二年間も空き店舗になっていたのであるから、原告の右供述は到底信用できない。)、被告Y1から原告に支払われるべき報酬は、一か月二万円から二万五〇〇〇円であるから、設備使用料の五分の一から四分の一程度にしかならず、設備使用料を補う程度の意味しか持ち得ないこと、<4>被告Y1は、本件契約締結後二か月の期間と約四〇〇万円の費用をかけて本件店舗の内外装の改装、什器備品の買い替えを行っており(右1、(七)、(7) 、(11)で認定したとおり、本件契約書では、右改装や買い替えの費用は被告Y1が負担することになっている。)、原告は、本件店舗のごく近くに居住し(弁論の全趣旨)、本件店舗での営業開始後は一か月に一回程度本件店舗を訪れていたのであるから、当然、右事実を知っており、これを承認していたものと考えられること等、本件契約の実質は経営委託契約ではなく、賃貸借契約であることを示す事実も存在する。
(三) 原告本人尋問の結果によれば、原告は、本件契約について、経営委託契約であり、本件契約書に記載されているとおり(右1、(七)、(4) )、一年の期限がくれば、更新について話し合いをし、話し合いができなければ契約は終了すると考えていたものと認められるが、右(二)の事実によれば、本件契約がそのように拘束力の弱いものとは到底認められない。右(一)の事実によれば、本件契約においては、原告は、本件店舗を被告Y1に提供するだけではなく、本件店舗に備えられていた什器備品も被告Y1に提供することが約束されたものであることは認められるが、右(二)の事実によれば、右什器備品は使えるものは使うという程度の意味で提供されたものにすぎず、本件契約の実質は、本件店舗を被告Y1に賃貸することにあり(被告Y1は、本件店舗について、賃借人として独立した占有を有する。)、しかも、本来、店舗を賃貸するのであれば、内外装は、賃貸人である原告がその費用で整備して賃貸すべきものと考えられるところ、その費用も被告Y1が負担する約束のもとに賃貸されたものと認められる。
したがって、本件契約の性質は、被告らが主張するとおり、賃貸借契約と認めるのが相当であり、本件契約には、借地借家法が適用されるものというべきである。
二 本件契約更新について
1 甲二、三号証、乙三号証の(1) 、(2) 、四号証、原告、被告Y1及び被告Y2各本人尋問の結果によれば、<1>原告は、平成一一年三月八日の本件契約の更新にあたり、事前に本件更新契約書及び本件覚書を被告Y1に交付したこと、<2>本件更新契約書には、契約期間を六か月とし、連帯保証人を立てることを求める記載があり、本件覚書には、本件店舗において、スナックの営業に加えて午前一一時ころから喫茶店の営業をすることを求める記載があったこと、<3>右<2>の本件更新契約書及び本件覚書の記載は、本件契約は経営委託契約であり、原告は、契約期間についても営業内容についても自由に決められるという原告の認識を示すものであり、本件契約は賃貸借契約であると考える被告Y1は、本件更新契約書及び本件覚書に基づく契約更新を拒否したこと、<4>被告Y1は、原告から本件更新契約書及び本件覚書を交付され、本件契約の更新に不安があったため、平成一一年四月一六日、被告Y2に依頼して本件供託をしたこと、<5>原告は、同年五月、東京簡易裁判所に被告らを相手方として調停を申し立てたが、被告らは調停期日に出頭せず、調停は不成立になったので、原告は、同年七月、前訴訟を提起し、同年一〇月八日、原告と被告Y1との間で本件和解が成立したこと、以上の事実が認められる。
2 右事実によれば、平成一一年三月八日の契約更新時期には、本件更新契約書に基づく契約更新は行われておらず、借地借家法に基づく法定更新が行われたものと解すべきであり、本件和解の、「原告と被告は、本件委託契約について、従前の契約どおりの契約内容で平成一一年三月八日に更新されたことを相互に確認する。」という条項は、右法定更新を確認したものというべきである。
三 本件解除について
1 甲一、三号証、四号証の一から九まで、五号証の一から三まで、乙二号証、七号証の(1) から(3) まで、九号証、原告、被告Y1及び被告Y2本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一) 本件店舗におけるスナック営業では、被告Y1以前の賃借人もカラオケ演奏を取り入れており、本件店舗にはカラオケセットが備え付けてあったが、被告Y1は、これを買い替えて、カラオケ演奏を行った。
(二) 本件契約書では、営業時間は、午後六時から翌午前二時までとされていた(前記一、2、(七)、(8) )が、被告Y1は、売上をあげるために午前四時、五時まで営業することもあり、原告は、近隣の者から、カラオケの騒音に対する苦情を耳にすることもあった。そこで、本件和解においては、「ただし、被告は、原告に対し、被告の営業に関し、近隣に迷惑をかけないようにすることを約する。」との条項が設けられた。
(三) 本件和解後である平成一一年一〇月一九日に、品川区保健環境部に対し、本件店舗のカラオケが夜中三時ころまで続くので迷惑している、昨年直接言いに行ったり、警察を呼んでも改善されないとの苦情が入り、同月二一日に右保健環境部の担当者が本件店舗に赴き、現場実査を行ったが、苦情者は不在であり、昼間のため、被告らも不在であったので、原告から事情を聴いた。右保健環境部は、その後苦情者と連絡を取り、本件店舗でカラオケをしている日時を記録して知らせるように伝えたところ、右苦情者から、一一月二一日、二四日、二六日は、午前二時以降もカラオケの演奏をしている旨連絡があった。そこで、右保健環境部の担当者は、同年一二月一四日、再度現場実査を行い、被告Y1に対し、カラオケについて付近住民から苦情があったことを伝え、条例の規制等の説明をし、騒音を防止するよう指導した。そして、同月二四日、苦情者に現場実査の結果を伝えた。
(四) 原告は、平成一二年一月二六日、右保健環境部に右苦情処理に関する文書の情報公開を求め、同年二月三日、A環境部長名の「行政情報部分公開決定通知書」(甲四の一)を受け取り、同月七日、右苦情処理に関する文書を閲覧し、写し(甲四の二から九まで)の交付を受けて、右苦情処理の経過を知った。
(五) 被告Y1は、右(三)の品川区保健環境部からの指導後、深夜はカラオケをやめ、スポーツ、演劇、音楽番組をビデオ映像で流すという改善策を右保健環境部に伝え、以後は、これを守るように努めており、その後被告Y1に対し、カラオケ騒音についての苦情が持ち込まれたことはない。
(六) 本件エアコンは、昭和五六年に当時の本件店舗の賃借人が設置したものであったが、被告Y1が本件店舗で営業を開始した二か月後である平成一〇年七月ころから、水漏れが始まったので、エアコンの水抜き口からビニールホースで水を排出するようにして使用してきたが、平成一二年二月には、コンプレッサーの故障のため、稼働しなくなってきた。被告Y1は、本件契約においては、本件店舗の内外装の改装、什器備品の買い替えの費用は被告Y1が負担することになっていることは理解しているものの、本件エアコンは、本件店舗の基本的な設備であり、それが営業開始直後から故障しているので、原告にその修理義務があると考え、被告Y2を通して原告に打診したところ、原告が被告Y1の負担に帰する問題であるとの意向を示したため、本件エアコンの修理代に相当する支払拒絶設備使用料等の支払を拒絶した。
(七) そこで、原告は、平成一二年二月一五日付けの通知書に、被告Y1が本件和解に反してカラオケ騒音により近隣に迷惑をかけていること及び設備使用料及び報酬の不払いがあることを理由に本件契約を解除する旨記載し、被告Y1に郵送したが、被告Y1はこれを受領しなかったので、原告は、本件訴訟を提起し、訴状で、右同様の理由により、本件契約を解除する旨の意思表示(本件解除)をした。
2 そこで、右1の事実を前提に、本件解除の効力を検討する。
(一) 本件契約は、前記のとおり、借地借家法の適用のある賃貸借契約と解すべきであるが、賃貸借契約であるからといって、本件契約に定められた本件店舖の使用方法を被告Y1が守らなくてもよいことにはならない。その意味では、被告Y1が本件契約に定められた営業時間を守らず、本件和解に反して近隣の者から苦情が出るようなカラオケ演奏をしたことは本件契約に基づく使用方法に反するものといわざるを得ない。しかし、被告Y1は、品川区保健環境部から指導を受けた後は、改善策を実行しており、その後苦情が持ち込まれることもないのであるから、右使用方法違反が直ちに原告と被告Y1との間の信頼関係を破壊し、無催告解除を正当化するような重大な債務不履行となると認めることはできず、本件和解に反して近隣の者から苦情が出るようなカラオケ演奏をしたことを理由とする解除の主張は理由がない。
(二) 次に、乙一三号証、原告及び被告Y1各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、被告Y1の設備使用料及び報酬の支払は、遅れがちであり、特に、前払いであるべき設備使用料の支払が後払いとなっていることが認められる。また、本件供託は、原告が受領拒絶したわけでもないのになされたものであり、しかも、本件契約の当事者ではない被告Y2が供託者となっている(甲二)のであるから、これをもって弁済があったと認めることはできず、右供託金一二万三八六〇円に相当する設備使用料及び報酬は不払いとなっているものというべきである。さらに、本件エアコンの修理代については、被告Y1の言い分も理解できないではないが、先に判示したとおり、本件店舗の什器備品は、使えるものは使うという程度の意味で提供されたものにすぎず、本件契約の実質は、本件店舗を被告Y1に賃貸することにあったと解すべきであるから、本件エアコンも右什器備品の例外ではなく(右1で認定したとおり、もともと原告ではなく、本件店舗の賃借人が設置したものである。)、本件エアコンの修理あるいは買い替えは、被告Y1の負担において行うべきものと解されるので、支払拒絶設備使用料等の支払拒絶には理由がないものというべきである。
したがって、設備使用料及び報酬の不払いは、相当に重い債務不履行になるものというべきであるが、<1>先に判示したとおり、本件供託は、原告が、本件更新契約書及び本件覚書を一方的に交付したため、被告Y1が契約更新に不安を覚えて供託したものであること、<2>本件エアコンは、本件店舗で営業するうえで不可欠なものであり、被告Y1において、原告が修理するものと考えたことを必ずしも非難できないこと、<3>乙一二号証、原告、被告Y1及び被告Y2各本人尋問の結果によれば、被告らの主張1、(四)の事実が認められ、原告は二階の部屋の電気料金を長期間にわたって被告Y1に支払わせ続けていた(原告は、現在も本件店舗だけの電気メーターに取り替えていない旨供述している。)こと、<4>原告と被告Y1との間の紛争は、原告が本件契約を賃貸借契約と認めないことに発していると解されること、などの事情を考慮すると、本件解除時における設備使用料及び報酬の不払いが直ちに原告と被告Y1との間の信頼関係を破壊し、無催告解除を正当化するような重大な債務不履行となると認めることはできず、設備使用料及び報酬の不払いを理由とする解除の主張も理由がない。本件和解に反して近隣の者から苦情が出るようなカラオケ演奏をしたという右(一)の事実を加えても、本件解除に理由がないことに変わりはない。
(三) したがって、本件解除はその効力を有しない。
四 期間満了による終了について
原告は、本件契約は、平成一二年三月七日に期間満了により終了している旨主張するが、本件契約には、借地借家法の適用があるので、本件契約は、同月八日に法定更新されたものと認められ、原告の右主張は理由がない。
五 原告の明渡請求について
1 本件解除は効力を有さず、また、本件契約は期間満了により終了していないので、原告の被告Y1に対する本件店舗の明渡請求は理由がない。
2 被告Y2は、被告Y1の夫であり、本件店舗の開店準備及び閉店後の後始末を手伝っているだけで(被告Y1及び被告Y2各本人)、本件店舗を独立して占有しているものではないから、原告の被告Y2に対する本件店舗の明渡請求も理由がない。
六 未払の設備使用料及び報酬の金額
1 本件口頭弁論終結時(平成一二年六月一四日)において、本件供託及び支払拒絶設備使用料等を除いて被告Y1が平成一二年四月分までの設備使用料及び報酬を支払っていることは当事者間に争いがない。
2 本件契約によれば、本件口頭弁論終結時においては、被告Y1は、平成一二年五月分の設備使用料及び報酬並びに同年六月分の設備使用料の支払義務を負担していたものと認められる。そして、不払いの報酬(本件供託金に含まれるものは除く。)については、被告Y1が一か月二万八二五一円の支払義務を有することは当事者間に争いがない。
3 本件供託が弁済とは認められず、支払拒絶設備使用料等の支払拒絶に理由がないことは、先に判示したとおりである。
4 右1から3までによれば、本件口頭弁論終結時において被告Y1が原告に対して支払義務を負っている設備使用料及び報酬は、次のとおり、合計六〇万八六一三円である。
(一) 本件供託金相当の設備使用料及び報酬 一二万三八六〇円
(二) 支払拒絶設備使用料等(二か月分の設備使用料及び報酬) 二五万六五〇二円
(三) 平成一二年五月分の設備使用料及び報酬 一二万八二五一円
(四) 同年六月分の設備使用料 一〇万〇〇〇〇円
5 原告の請求は、本件解除が認められない場合は、予備的には本件解除後も設備使用料及び報酬を請求する趣旨を含んでいるものと解される。
七 よって、原告の本訴請求は、被告Y1に対し、六〇万八六一三円の支払を求める限度で理由があるのでこれを認容し、被告Y1に対するその余の請求及び被告Y2に対する請求はいずれも理由がないので、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 福田剛久)
物件目録
所在 品川区<以下省略>
家屋番号 <省略>
種類 事務所 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階 四六・〇四平方メートル
弐階 弐弐・参壱平方メートル
右のうち 壱階左側 約弐六・六七平方メートル
別紙図面赤枠部分
別紙図面<省略>